椎間板ヘルニア 獣医師 三宅

「椎間板ヘルニア」
脊椎(背骨)は一つ一つの短い骨が連なって形成されています。 その短い骨と骨の間でクッションの役割をしているのが椎間板です。この椎間板は脊椎にかかる圧力を分散してくれるためとても大切なものですが、なんらかの 原因(老化、外傷、激しい運動、遺伝的素因など)によって椎間板が変性して突出(ヘルニア)することで、脊椎の上にある太い神経(脊髄)を圧迫してしまい ます。突出した椎間板が脊髄を圧迫することで痛みや麻痺といった神経症状が生じます。頚部、胸部、腰部のどこにでも発症の可能性はあります。

症状
人 では痺れるような違和感を訴えて受診することが多いようですが、動物の場合では「後ろ足が急に立たなくなった」「歩かない」「触ると痛がる」などの症状が でてから慌てて受診されることがほとんどです。しかし、よくよくお話を聞きますと、「そういえば、ここ最近ソファに飛び乗らなくなっていた」「段差を嫌 がっていた」「散歩の途中で帰りたがっていた」などの初期症状がみられていたケースがほとんどです。

診療方法
病 院では神経系の検査やレントゲン検査を行いますが、実際にどの個所の椎間板がどのように突出しているのかを判断するにはCT・MRI検査が必要になりま す。軽度の場合では内科療法で良化がみられることもありますが、完全な麻痺を起こしてしまうと、内科療法での治癒を期待することは困難です。根治は外科手 術になります。

予防方法
1.体重管理
太りすぎは万病のもとです。
日頃から体重管理を行って、腰に余分な負担をかけないように心がけてあげましょう。

2.動作の制限
ソファへの飛び乗り・飛び降り、後ろ肢でピョンピョンとび跳ねるなどの動作はなるべく止めさせましょう。

3.床材の見直し・足裏のケア
コルク板やカーペットなど、滑りにくい素材のものを敷いてあげましょう。また、直接フローリングに塗れる滑り止めなどもあります。階段などにも同様の滑り止めをしてあげると良いですね。
足裏の毛や爪も定期的にチェックして、問題がないか気にしてあげるようにしましょう。

4.抱き方に気をつける
仰向けに抱っこしたり、脇に手を入れて持ち上げたりすることも背骨に負担をかける可能性があります。日頃から無理な体勢になっていないか気をつけて抱くようにしましょう。

椎間板ヘルニアになりやすい犬種
ダックス・フンドが椎間板ヘルニアを起こしやすいというのは有名な話ですね。
胴 が長く、腰に負担がかかることが原因だということをご存知の方は多いと思いますが、実は「胴が長いから」という理由だけではないのです。軟骨異栄養症※ (軟骨低形成症・軟骨形成不全症)という言葉を聞いたことはありますか?軟骨異栄養犬種といわれる犬種は椎間板の変性を起こしやすいことが知られており、 ダックス・フンド、コーギー、シー・ズー、ペキニーズ、ビーグル、フレンチブルドッグなどが含まれます。

※軟骨異栄養症
人で、遺 伝性疾患により手足が極端に短く産まれてくることがありますが、これが軟骨異栄養症です。軟骨異栄養犬種とは、もともとこの遺伝子をもっている犬種のこと で、代表例がダックスです。この犬種は椎間板の早期変性を起こしやすいため、一般的には老齢で発生する椎間板ヘルニアが若いうちに発生しやすくなってしま うことがあり、注意が必要です。通常、椎間板ヘルニアは一番負担をかけてしまっている所にでますので、その病変部位は1~多くて2,3ヶ所なのですが、軟 骨異栄養犬種では何ヶ所もの椎間板が同時に変性して症状を起こしたり、外科手術で治しても別の箇所がまたヘルニアを起こしたりします。

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