獣医師が解説【猫の異物誤飲】嘔吐など代表的な症状、原因、治療法、通院の判断は?
この記事を監修した獣医師
anicli24 院長
三宅 亜希みやけ あき
犬・ネコの病気、予防医療、しつけ、ペットに関する気になることを専門の獣医師に電話相談できる電話動物病院「アニクリ24」の院長。日本大学生物資源科学部獣医学科卒業。
犬・ネコの病気、予防医療、しつけ、ペットに関する気になることを専門の獣医師に電話相談できる電話動物病院「アニクリ24」の院長。日本大学生物資源科学部獣医学科卒業。
猫ちゃんの異物誤飲 代表的な症状
猫は長いものにじゃれたり噛んだりすることが多く、子猫のときから、毛糸やひも状のおもちゃで遊んでいた子はその傾向が強くなります。
そのまま飲み込んでしまうと、消化菅のどこかに詰まってしまうおそれがあり、とても危険です。異物を誤飲した場合に、どのような症状が起こるのか、「食道」「胃」「腸」の3か所分けて見てみましょう。
食道に異物がある場合
飲み込む途中で食道に詰まってしまうことがあります。
食道に物が詰まると、食道のすぐ隣にある気管(肺と空気をやりとりする通路)を圧迫してしまい、
うまく息ができず呼吸困難を起こすこともあります。
また、吐きたそうにしたり、咳き込んだり、普段聞き慣れないような「グゥグゥ」という音が喉から聞こえることもあります。
胃に異物がある場合
胃までたどり着いた異物は胃粘膜を傷つけて胃を荒らしたり、嘔吐を引き起こしたりすることがありますが、胃内に留まっている間は大きな症状が出ないこともあります。
胃の出口(腸の入口)は狭いので、そこに詰まって嘔吐や痛みが引き起こされることもあります。
腸に異物がある場合
食道・胃を通り抜けると最大の難関である腸にたどり着きます。
異物が通過していく過程で、腸に炎症が起こり下痢などを起こすことがあります。また、腸は非常にデリケートな組織なので、異物が長時間接触していると、その部分の粘膜が壊死を起こしてしまうこともあります。
異物が完全に腸に詰まってしまうと、元気食欲がなくなり、一日に何度も嘔吐が見られるようになり、ぐったりとして非常に危険な状況になります。
「異物を飲んでしまったあと、もし腸に詰まってしまうとしたらどれくらいの時間が経ってからになりますか?」と聞かれることがありますが、これはなかなか答えづらい質問です。
なぜならば、異物がどれくらいで腸に流れてくるのかが予想できないからです。
通常の食べ物の場合は、食べてから2~4時間くらいで胃から腸へ移動してくることがほとんどですが、異物の場合は食べ物と同じくらいの時間で腸へ移動することもあれば、長時間胃内に留まることもあるからです。
実際、異物誤飲から数日後に異物を吐き出したり、数週間後に腸閉塞を起こしたりするケースもあります。
異物誤飲はどの猫にも起こりえますが、一般的には若い猫で多い傾向にあります。
POINT
– 誤飲直後に喉から聞きなれない音がしたときは食道に詰まっているかも
– 異物が胃の中にある間は大きな症状が起こらないことも
– 食べられず嘔吐を繰り返すときは腸閉塞の危険大
猫ちゃんの異物誤飲の原因は?
猫の異物誤飲の原因は、残念ながら人の不注意(興味を引きそうなものをうっかりしまい忘れるなど)によるものが多いですが、まれに「異嗜(いし)」という、食べ物以外のものを自ら好んで食べてしまう異常行動が原因になっていることもあります。「異嗜(いし)」は、人では精神障害や栄養障害が要因になっていると考えられており、猫でも同様の可能性があります。また、人の気を引くために行うケースもあります。繰り返し異物誤飲を起こす場合は「異嗜(いし)」を疑って受診をしてみてもいいかもしれません。
猫ちゃんの異物誤飲 通院の判断は?
猫が異物を飲み込んだところを目撃したり、猫の異物誤飲が疑われたりする場合(さきほどまであったものが見当たらないなど)は、なんの症状が出ていなくてもできるだけ早急な受診が推奨されます。理由としては、胃内にある異物を取り出すほうが、腸内まで移動した異物を取り出すよりも、負担やリスクが少ないからです。
もし、飲み込んだかどうかわからない、飲み込んだものがとても小さいので病院に連れていくほどには思えない、など受診に迷われる場合は、アニクリ24の獣医さんに直接相談してみませんか。
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猫ちゃんの異物誤飲の検査・治療は?
検査
猫の異物誤飲では一般的には以下の検査を行います。
問診で飼い主さんから飲み込んだものが何か、飲み込んだのはいつか、症状がある場合は症状が始まったタイミング、普段の食事、などについて詳しく話を聞きます。飲み込んだ異物と同じものがある場合は持参するようにしましょう。
画像診断で、異物を確認したり、消化器(胃や腸)の炎症状況を確認したりします。バリウムなどの造影剤を使用することもあります。
血液検査では、一般的な健康状態を確認します。特にすでに嘔吐などの症状がある場合は、電解質バランスの乱れや、強い炎症反応が確認されることがあります。
治療
食道に異物がある場合
詰まっているものを自力で吐き出させるのは困難なので、全身麻酔をかけて口から取り出すか、逆に胃に押し込んで自然な消化を待ちます(詰まっているものが安全な食品の場合のみ)。
一方、消化できないような物の場合には、胃に押し込んだあとに内視鏡もしくは胃切開にて取り出します。
胃に異物がある場合
消化できるものや、とても小さいものの場合には経過観察で様子をみることがあります。それ以外のものは、麻酔をかけて内視鏡か胃切開により取り出します。
催吐処置(さいとしょち)といって、吐き気を起こさせる薬剤を使用して、胃内の異物を吐き出させることもありますが、吐くときに飲み込んだ異物が胃や食道を傷つけるおそれがあるため、安全に吐かせることができると判断された場合にのみおこなわれます。
腸に異物がある場合
麻酔をかけて腸切開をして取り出します。異物が詰まっている場所の腸が壊死を起こしている場合は、その部分の腸を切除する必要があります。また、糸のように細くて長いものは、腸粘膜に張り付いて吸収され糸の長さ分の広範囲の腸がダメージを受けることもあります。こういったケースでは手術の難易度やリスクも高くなります。
内視鏡で取り出せるケース(食道・胃)では、当日もしくは翌日には退院できることが多いですが、胃や腸を切っている時は数日間の絶食と点滴入院が必要になります。食事が食べられるようになったら退院が可能となります。
猫ちゃんの異物誤飲 予防はできる?
猫の異物誤飲は予防できます。目の届くところに物を置かないように気を付けましょう。
また、常に食べ物を探してゴミ箱を漁ってしまうような場合は、転がす度に数粒ずつフードが出てくるようなオモチャを置いておくとよいでしょう。
ひもに興味を示さないように、子猫のころから毛糸やひも状のおもちゃで遊ぶのはやめましょう。
また、人の薬は誤飲すると少量でも危険なことがあります。必ず蓋のついている箱や引き出しの中で保管するようにしましょう。
アニクリ24では、病気の相談以外にも、なにか普段と違う異変を感じたとき、不安を感じたときに いつでも直接獣医師に相談することができます。
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