獣医師が解説【猫のウイルス性感染症】 コロナウイルスの代表的な症状、原因、治療法、受診の判断は?

この記事を監修した獣医師

anicli24 院長

三宅 亜希みやけ あき

犬・ネコの病気、予防医療、しつけ、ペットに関する気になることを専門の獣医師に電話相談できる電話動物病院「アニクリ24」の院長。日本大学生物資源科学部獣医学科卒業。

猫のコロナウイルス感染症 代表的な症状

猫のコロナウイルス感染症はウイルスによる感染症で、「猫腸コロナウイルス感染症」ともいいます。通常は感染してもほとんど症状がみられない不顕性感染になることが多く、発症した場合でも軽度の下痢が見られる程度で、重症化することはあまりありません。一方で、猫コロナウイルスが猫の体内で強毒化し、「猫伝染性腹膜炎」という重篤な病気を起こすことが知られています。
猫伝染性腹膜炎は症状により以下の2つに分けられますが、どちらも致死率は非常に高いです。

「ウェットタイプ」

体腔(体の空洞部分)が傷害をうけます。腹膜炎を起こし、お腹に水(浸出液)がたまってふくれてくるのが特徴です。元気、食欲はなくなり、発熱を繰り返してぐったりします。胸に炎症が起こると、胸に水がたまってしまうため、肺が圧迫されて呼吸が苦しくなります。

「ドライタイプ」

臓器が傷害を受けます。障害を受けた臓器には機能障害が起こります。腎臓や肝臓に硬いしこりができたり、脳に病変が起きて神経症状が出たり、眼に病変が起こって濁ったりなど、症状は多岐に渡ります。

POINT

– 「猫腸コロナウイルス感染症」はほとんど症状が出ないか軽度の下痢程度

– 「猫伝染性腹膜炎」の症状は2タイプに分かれ、どちらも致死率は非常に高い

猫のコロナウイルス感染症の原因は?

猫のコロナウイルス感染症の原因になるのは、猫コロナウイルスと呼ばれるウイルスです。すでに感染した猫の便に排出されたウイルスを、他の猫が口にすることで感染が成立します。猫コロナウイルスは、病原性はさほど高くないですが、感染力は強いため、たくさんの猫が一緒にいる環境(繁殖施設、保護施設、販売施設など)では感染が拡がってしまう恐れがあります。猫コロナウイルスが体内で強毒化すると致死率の高い「猫伝染性腹膜炎」を起こします。なぜ強毒化が起こり、このような症状が起こってしまうのかははっきり分かっていない部分もありますが、感染した猫の免疫系統が大きく影響を及ぼすことが分かっています。

POINT

– 猫のコロナウイルス感染症は、病原性は高くないが感染力が強い

– 猫コロナウイルスが体内で強毒化し、猫伝染性腹膜炎を起こす

– 猫コロナウイルスがなぜ強毒化するかは分かっていない

猫のコロナウイルス感染症 受診の判断は?

特に、家に来たばかりの子猫で、混合ワクチンが未接種だったり、混合ワクチン接種歴が不明だったりする場合で、下痢、嘔吐などの症状がみられたときは、早めの受診を検討しましょう。
また、子猫に突然の発熱や食欲の低下、元気の低下などがみられたときは様子をみずに受診するようにしましょう。
もし、病院に連れていくほどの様子には思えない、など受診に迷われる場合は、アニクリ24の獣医さんに直接相談してみませんか。

Anicli24は24時間365日
いつでも相談できる電話動物病院です。

登録は約5分で完了。経験豊富な獣医師に、今すぐ電話で相談できます。

猫のコロナウイルス感染症の検査・治療は?

検査

猫のコロナウイルス感染症は、一般的には以下の検査を行います。

問診で飼い主さんから普段の様子、症状がある場合は症状が始まったタイミング、飲んでいる薬、予防歴、食事、などについて詳しく話を聞きます。とくに混合ワクチンの予防歴は重要です。
猫腸コロナウイルス感染症により下痢をしている場合は、便検査で寄生虫や寄生虫の卵の有無、細菌の状態を確認し、猫のコロナウイルス感染症以外の病気で消化器症状が起こっていないかも確認します。
猫伝染性腹膜炎により多様な症状が起きている場合は、血液検査やレントゲン検査に加え、CT検査、MRI検査を行うこともあります。胸水や腹水が採取できた場合は、その検体も検査します。
猫コロナウイルスに感染しているかどうかは抗体検査などで判断することができますが、感染している猫コロナウイルスが、強毒化したものか否かまでは分からないため、猫伝染性腹膜炎の確定診断は非常に難しいです。

治療

猫腸コロナウイルス感染症は、通常治療の必要がないほど軽症のことが多いです。
一方、猫伝染性腹膜炎は重篤な症状が起こるものの、効果的な治療法がありません。現在、猫伝染性腹膜炎の治療用に承認されている動物用医薬品はありませんが、抗ウイルス薬、抗炎症薬などを使用し、胸水や腹水が溜まるウェットタイプでは、定期的に溜まった浸出液を抜きます。また、多岐に渡る症状に対する対症療法を行います。

猫のコロナウイルス感染症 予防はできる?

猫のコロナウイルス感染症には有効なワクチンは存在しないため、予防をすることは難しいです。また、体内の猫コロナウイルスが強毒化する仕組みも解明されていないため、強毒化を予防することもできません。猫に多大なストレスが加わることが強毒化の引き金になるという説もあるので、大きな病気や不適切な多頭飼育から守ることは意味があるかもしれません。
多頭飼育で感染が起こった場合は、完全隔離と消毒が必要になります。コロナウイルスはアルコールや界面活性剤による消毒が可能です。

アニクリ24では、病気の相談以外にも、なにか普段と違う異変を感じたとき、不安を感じたときは いつでも直接獣医師に相談することができます。

Anicli24は24時間365日
いつでも相談できる電話動物病院です。

登録は約5分で完了。経験豊富な獣医師に、今すぐ電話で相談できます。

一覧に戻る

関連記事を読む

Copyright © Anicli24 AA Rights Reserved.