よくある相談【犬の便秘 前編】獣医師が代表的な原因、対処法、受診の判断、検査・治療について徹底解説

この記事を監修した獣医師

anicli24 院長

三宅 亜希みやけ あき

犬・ネコの病気、予防医療、しつけ、ペットに関する気になることを専門の獣医師に電話相談できる電話動物病院「アニクリ24」の院長。日本大学生物資源科学部獣医学科卒業。

よくある相談内容

実際に相談される理由としてよくある症状を紹介していきたいと思います。ご自宅のワンちゃんに同症状がみられた時に、参考にしてみて下さい。

うんちが出ていない

4歳のメス、チワワです。普段は1日2回うんちが出ていますが、今日はまだ出ていません。どれくらい便が出なくても大丈夫なのでしょうか。

獣医師からの回答

実は、何日以上便が出なければ便秘という定義はありません。そのため、どれくらい便が出なくても大丈夫(=便秘ではない)かは、犬それぞれによって異なります。何度もトイレに行く、排便姿勢を取っているが出ない、食欲が落ちている、などが見られるようでしたら受診をお勧めしますが、そのような素振りが一切なければ少し様子をみてもいいかもしれません。

なお、次にした便がいつもより小さく硬く、匂いもきついようだと便秘であると考えられます。

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ワンちゃんが便秘を起こす原因

犬が便秘を起こす原因は多岐にわたります。一般的に猫に比べると重症な便秘は起こりにくいですが、犬の便秘の原因として押さえておきたい5つの原因を紹介したいと思います。ご自宅の犬に同症状がみられた時に、参考にしてみて下さい。

1. 不適切な食事や飲水
2. 機能性便秘
3. 器質性便秘
4. 症候性便秘
5. その他

不適切な食事や飲水

フードを変えたタイミングで排便の調子が悪くなった場合は、食事の影響が考えられます。例えば、食物繊維などはスムーズな排便に効果的であることが知られていますが、取りすぎると便秘の原因になることがあります。また、小食、おやつは食べるが総合栄養食であるフードをほとんど食べない、というような場合も注意が必要です。
さらに、なんらかの原因で長時間思うように飲水できなかった場合(飲み水を入れる容器をひっくり返してしまった、給水ボトルでうまく飲水ができないなど)、便秘の要因となりえます。
上記の原因が疑われるときは、フードやおやつの量や種類、与える時間などをみなおします。また、十分に飲水ができているかどうかも確認しましょう。給水ボトルしか置いていない場合はお皿にも水を用意します。また、水の容器をひっくり返さないように重たい食器や台のついたものなどを使用することもおすすめです。

機能性便秘

排便は自律神経がコントロールしています。自律神経が正しく働かないことによって起こる便秘を機能性便秘といいます。機能性便秘は以下の3つに分かれます。

弛緩性便秘

大腸の動きが弱まることで、便の通過に時間がかかり、その間に便の水分が失われて便が硬くなります。腹筋など筋力の低下や小食、変色などが影響します。

痙攣性便秘

大腸の動きに規則性がなくなり正常に動かなくなることで、便が通過できなくなり、便の水分が失われて便が硬くなります。ストレスが影響します。

直腸性便秘

通常、便が直腸まで到達すると排便をしたくなりますが、この排便のサインに鈍感になり、便秘が起こります。トイレを我慢するような状況(落ち着けない、汚れている、しつけなど)が続くことが影響します。

器質性便秘

物理的な便の通過障害が原因となります。一般的に以下のような病気や症状があります。

骨盤狭窄

交通事故などにより骨盤骨折をした際に、適切な治療を受けずに放置してしまうと、正しい位置で骨がくっつかず、骨盤が狭くなってしまうことがあります。そのため、便の通過がスムーズに行われず慢性的な便秘を起こします。便秘の重症度によっては、外科手術をして骨盤を整復することがあります。

腸管内異物

食べ物ではない異物を誤って飲み込むことで、腸管で通過障害が起こります。通過障害の程度により症状はことなります。あまり大きな症状がなく、便と一緒に排泄されることもありますが、便秘や嘔吐が起こったり、腸管に壊死が起きたりすることもあります。完全に閉塞してしまった場合は、外科手術により異物を取り除く必要があります。

腸管腫瘍

犬でよくみられる腸の腫瘍(腸管腫瘍)には、腺癌、リンパ腫、平滑筋肉腫、平滑筋腫などがあります。また、大腸にポリープができることもあります。腫瘍の種類、腫瘍ができた場所、悪性腫瘍だった際のステージ(転移の有無など)などにより異なります。一般的には、食欲不振、便秘、軟便、血便、嘔吐、腸の通過障害(腸閉塞)、などがみられます。基本的には外科手術が行われます。腫瘍の種類によっては外科手術ではなく化学療法が選択されるケースもあります。また、外科手術と化学療法を併用することもあります。

肛門の痛み等

肛門嚢(肛門腺の分泌液が溜まっている袋状の器官)の炎症や、便と毛が絡まり肛門に蓋をしてしまっている状態などが挙げられます。おしりをこすりつけたり、排便時に鳴いたり、痛みから食欲不振を起こしたりします。肛門嚢は絞り、必要に応じて抗生剤や消炎剤などが使用されます。また、便や毛が肛門を塞いでいるようなケースでは、バリカンで刈り、おしりを洗ってあげます。肛門が炎症を起こしている場合は抗生剤や消炎剤が処方されます。

会陰ヘルニア

会陰部(メスでは肛門から膣口の間、オスでは肛門から睾丸の間)に起こるヘルニアにより、骨盤内にあるべき組織(脂肪、腸管、膀胱など)の一部が筋肉から飛び出してしまう疾患です。ヘルニアの重症度や何が飛び出しているかによって症状はことなりますが、排便困難、排便通、排尿困難、排尿痛、などが起こります。外科手術により飛び出している組織をもとの場所に戻し、ヘルニア部分を塞ぎます。

症候性便秘

物理的な便の通過障害はないものの、他の病気や症状が原因となっている便秘です。一般的には以下のものが挙げられます。

神経疾患

椎間板ヘルニアや馬尾症候群が起こると脊髄が圧迫され、痛み、跛行、麻痺、排泄困難などが起こります。ごく軽度の場合は内科療法を行うこともありますが、根本的な治療として外科手術が必要になることも多いです。
軟骨異栄養症の遺伝子をもっている犬種は椎間板ヘルニアのリスクが高まります。

※軟骨異栄養症
人では、手足が極端に短く産まれてくる遺伝子疾患があります。これを軟骨異栄養症といいます。軟骨低形成症、軟骨形成不全症と呼ばれることもあります。この遺伝子を持っている犬種を軟骨異栄養犬種といい、ダックフント、コーギー、シー・ズー、ペキニーズ、ビーグル、フレンチブルドッグなどが該当します。この犬種は椎間板の変性を起こしやすく、若齢でも椎間板ヘルニアが発生したり、複数の椎間板が同時に変性して症状を起こしたりするリスクがあります。

関節疾患

膝蓋骨脱臼や股関節形成不全、レッグペルテスなど、膝や股関節などの関節に疾患があると、跛行や歩行時の痛みなどが生じます。排便姿勢を取ることが難しくなるケースもあり、その場合は便秘を起こすことがあります。内科療法で痛みを抑えることもありますが、根本的な治療は外科手術です。

糖尿病

糖尿病は、インスリンが足りない、もしくは正常に働かないことにより、血中の糖が増える病気です。多飲多尿、痩せる、元気消失、食欲不振などが現れます。糖尿病で血糖値が安定しないと自律神経が正常に働かず、腸運動も不十分になり便秘になることがあります。犬の糖尿病の多くは、インスリンを作り出す膵臓が働かなくなることで起こるもので、注射によるインスリン投与が必要になります。

甲状腺機能低下症

甲状腺から分泌される甲状腺ホルモン(サイロキシン(T4)、トリヨードサイロニン(T3))の量が不足することで、身体の様々な働きが低下します。元気消失、疲れやすくなる、体重が増える、脱毛や色素沈着が起こる、体温低下などが起こります。便秘が生じることもあります。治療は、甲状腺ホルモンの内服などが一般的です。

その他

腎臓病の時に飲む吸着剤、下痢の時に飲む薬、抗コリン薬などにより便秘が起こることがあります。

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