1 高齢化事情とサイン 獣医師 佐藤

現在、人間の世界では高齢化社会が問題になっていますね。
でも、ペットの世界でもペットの平均寿命が延び、高齢化社会が始まっているのです。
それに伴って、高齢犬のお世話の方法で悩まれる方、認知症で悩まれる方が増えてきています。

家族同様に暮らしてきて、どんな時も傍にいてくれた元気なペットも、
私たちよりもずっとずっと早く年をとってしまいます。
近年は高齢ペットを置き去りにするケースもあり問題になっています。
愛するペットが年老いて、私たちの力を必要としたとき、慌てることなく支えてあげられるよう、
ペットの高齢化について、考えておくことは大切なことです。

そこで、このシリーズでは高齢犬との生活について、何回かに分けてお話ししていきたいと思います。

まず、今回はペットの高齢化事情などに関してお話ししていこうと思います。

ペットの平均寿命は2003年度の全国調査の結果から

・犬・・・11.9歳(12年前より3.3歳のびた!)

・猫・・・9.9歳 (12年前より4.8歳のびた!)

とされています。(犬、約3,200頭 猫、約1,800頭を対象)

 

最近では、2008年にペットフードメーカーが全国の動物病院へのアンケートという形で来院するペットの平均寿命を調査しており、

・犬・・・11.7歳

・猫・・・12.5歳

という結果が出ています。(犬、約300頭 猫、約300頭を対象)

2003年度の大規模な調査に比べて、ワンちゃんは差がありませんが猫ちゃんにはだいぶ違いがみられます。

 

この数値は、当然現在も延び続けていると考えられており、2009年では、7歳以上のペットは

・犬・・・55.3%(1年間で4.3% up!)

・猫・・・47.4%(1年間で1.6% up!)

という調査結果も出ています。

 

では、なぜペットの寿命は昔と比べてこんなにも延びてきているのでしょうか?

 

寿命の延長の理由として考えられるのは、

・ペットフードの質が向上したこと

・室内飼育が増えたこと

・ペットが家族の一員として扱われるようになったこと

・予防の大切さが広まったこと

・獣医療が進歩し、昔は治せなかった病気も治るようになったこと

などがあります。

 

大切なペットが長生きするようになった事は大変喜ばしいことですが、寿命が延びるにつれて、今まではあまり遭遇しなかった疾患が動物にも多くみられるようになってきました。例えばガン、心臓病、肥満に伴った病気などが多くの老犬に見られるようになり、さらに認知症を発症することも多くなってきました。

 

では、“高齢犬”というのは何歳くらいからを指すのでしょうか?一般的には7歳を超えると高齢期に入ると言われています。近年ペットフードも年齢別に分けられていますが、シニアフードと書かれたものは大体が「7歳以上から」と書かれていることが多いと思います。

 

実際にどれくらいのスピードで愛犬が年をとっていくのか、人と犬の年齢を比較したいと思います。

 

*大型犬は小型・中型犬より早く年をとります。

*小型・中型犬は →1年で15歳、2年で24歳、以降3年目からは1年につき4歳ずつ年をとっていきます。

*大型犬は →1年で12歳、以降2年目からは1年につき7歳ずつ年を取っていきます。

 

ぜひ、愛犬の年齢がどれくらいなのか計算してみてくださいね!

 

赤ちゃんだったペットもあっという間に私たちの年齢を追い越して、高齢犬の仲間入りをします。

いつまでも甘えん坊で、見た目にも年の割に若く見えますが、少しずつ老化のサインを出していることが多々あります。そのサインに早く気付いて、年齢に応じた接し方をしてあげることが大切です。

 

では次にペットが発する老化のサインについてご紹介しましょう!

 

【見た目の変化】

○お尻が小さくなる
筋力が低下している? →関節をかばう為にあまり足を動かさないから。

 

○同じご飯でも体重が減る
消化・吸収能力が低下して栄養を取れていない?

 

○同じご飯でも体重が増える
基礎代謝が低下している?

 

○眼が白く濁る
白内障?
(核硬化症と言って同じように眼が白く濁るものもあります。病気ではなく加齢による生理的変化です)

 

○皮膚がかさつく
皮膚の潤い保持力の低下?
内分泌疾患?

 

○抜け毛が増える
毛の生え換わるサイクルが早くなった?

 

 

【行動の変化】

○後ろ足の歩幅がせまい
足の関節や腰が痛い?

 

○物にぶつかる
視力の低下?
匂いがうまく嗅げない?

 

○声をかけても気付かない
耳が遠くなっている?

 

○動作に時間がかかる
関節が痛い?

 

○すぐに息がきれる
心臓や肺の働きが衰えている?
内分泌疾患?

 

○お漏らしをする
関節が痛くてすぐに動けないから?
おしっこの溜まった感覚が鈍くなった?
泌尿器の働きが衰えている?

 

○排泄物の変化
尿の様子が変わった → 膀胱炎?泌尿器の働きの衰え?

ウンチの様子が変わった→ 消化・吸収が変化した?腸の働きの変化?

 

 

ざっと挙げただけでもこれくらいのサインがあります。

 

 

この他にも、

・白髪が増えた

・皮膚がたるんできた

・イボができた(腫瘍の可能性もあるので注意が必要です)

・シミができた

・口臭がする

などといった変化も見られるようになってきます。

 

どうですか?ご自宅の愛犬にこのような変化はみられていませんか??

では!この様な変化が見られ始めたら、どんな注意が必要なのでしょうか?

 

 

注意すべきことには、以下のようなことがあります。

・健康診断を定期的に受けること

→若いころに健康診断を受けておくと、比較できるのでより良い判断ができますよ。

 

・飼育環境を大きく変化させないこと

→寝床を変えたり、模様替えをしたりするとストレスになったり、視力の低下した子では場所が分からず戸惑ってしまいますよ。

 

・フードの変更を徐々に始めること

→シニアフードにしていない場合は徐々にフードを切り替えましょう。

 

・適度な散歩を行うこと

→年を取って、動くのが億劫そうだからと言って散歩を減らすと、筋力が余計に低下してしまいます。適度なお散歩は続けましょう。足腰が本当に弱ってしまい歩けない子でも、最近はペット用の乳母車もあるので、外の空気を吸わせてあげましょう。良い気分転換になりますよ。

 

 

・愛犬と触れ合う時間を減らさないこと

→“疲れさせてはダメ”“静かに寝られるように”などといった気遣いから、愛犬と触れ合う時間を減らしたり、今まで家族の集まる部屋にあった寝床を静かな場所に変えると、愛犬は疎外感で寂しい気持ちでいっぱいになってしまいます。寝床の場所をあえて変える必要はないですし、触れ合う方法を変えれば(例えば、激しいボール遊びをやめてマッサージをするetc)その時間をあえて減らす必要もないでしょう。

 

いかがですか?

 

このように、たくさん書いてしまうと、すごく大変なことのように感じてしまいがちですが、あまり神経質になることはありません。今までの生活に少し工夫を加えてあげるだけで大丈夫!飼い主さんの心の変化が一番愛犬に与える影響が大きいと思うので、気を遣い過ぎず、ゆったりした気持ちで接してあげましょう。

 

 

次回は、高齢期の愛犬に起こりうる疾患や、それに応じて飼い主の皆さんがお家でしてあげられる事などについてお話ししたいと思います。

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